システム引き継ぎで直面する課題と解決策 ― Google Cloud基盤での実践例

クラウドを活用したシステムは、業務やサービスの成長に合わせて多様化・複雑化しています。
その一方で、他社が構築したシステムを引き継いで運用・保守を担うケースも少なくありません。こうした引き継ぎでは、ドキュメント不足や設計意図の不透明さ、技術的負債など、独自の課題が顕在化しやすくなります。
本記事では、Google Cloud基盤のシステム引き継ぎで直面した課題とその解決アプローチを紹介します。後半では、その具体例としてCDP(顧客データプラットフォーム)システムを引き継いだ実践事例も交えて解説します。
他社構築システムを引き継ぐ際の主な課題
- ドキュメント不足
他社が設計・構築したシステムでは、設計意図や構成が詳細に記録されていないことがあります。これにより、システムの全体像を把握するまでに時間がかかる場合があります。 - 独自設定・カスタマイズ
他社特有の実装やカスタマイズが存在するため、一般的なGoogle Cloudの知識だけでは対応が難しい場面があります。 - 技術的負債の顕在化
長期間運用されているシステムでは、設計段階での技術的負債(古い技術スタックや非効率なデータパイプライン)が引き継ぎ時に課題として浮上します。 - ビジネス要件の変化
システムが構築された当時の要件と、現在のビジネス要件が乖離していることも多く、保守だけでなく改善提案が求められる場合があります。
引き継ぎを成功させるためのアプローチ
初期段階の徹底的な分析
まずはシステムの現状を把握することが最優先です。具体的には以下を実施しました。
- 構成の棚卸し
Google Cloudの各リソース(BigQuery、Cloud Storage、Cloud Composer、Cloud Functionsなど)の役割を整理。
- データフローの可視化
データ収集、統合、分析、活用のフローを把握。システム間連携の可視化。
- ログ確認
Stackdriver LoggingやCloud Monitoringを活用し、運用状況やエラー傾向を把握。
ドキュメントの再構築
欠落している情報を補完し、新たな運用マニュアルや設計書を作成します。
このプロセスは後続の保守作業を効率化するだけでなく、チーム内での共有知識の向上にもつながります。
技術的負債の優先的解消
運用を妨げる問題を特定し、優先順位をつけて対応します。
- パフォーマンス改善
BigQueryクエリの最適化や不要データのアーカイブ化。
- 最新バージョンへの定期更新
定期リリースされる最新バージョンへのアップグレード手順を確立。
ステークホルダーとの連携
ビジネス要件に応じた改善提案を行うため、システムの利用者やマーケティングチームとの継続的なコミュニケーションを図ります。
実践事例:CDPシステムの運用最適化と成果
実際にGoogle Cloud基盤で構築されたCDP(顧客データプラットフォーム)システムを引き継いだ際には、以下の取り組みにより安定稼働を実現しました。
課題:ジョブ失敗時のリカバリー対応が属人化していた
対応:エラー調査手順と再実行手順をマニュアル化し、運用を標準化
成果:エラー対応の標準化により、引継ぎがスムーズに行える体制を構築
まとめ
システム引き継ぎは、設計ドキュメント不足や技術的負債、要件変化など多くの課題を伴います。しかし、現状分析・ドキュメント再構築・技術的負債の解消・関係者との連携を進めることで、円滑な引き継ぎと安定稼働を実現できます。
各システム基盤に合わせた柔軟なサービスを活用し、運用効率化と継続的な改善を重ねることで、ビジネスに最大限の価値を提供できる体制を築くことが可能です。
システムの引き継ぎや運用に関するご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。